46人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
浜辺にそそりたつ巨人像。
島に背を向けて北の方向を、カッと目を見開き睨んでいる。
島民はそれを「タロス像」と呼び、守り神として崇めていた。
足元の台に盛られているのは、島で採れた果実や花だ。
誰かが供えていったのだろう。
弟はそっと手を伸ばし、供えた果実を盗み食いした。
「こら、行儀が悪いだろ」
兄は弟をたしなめる。
そこへ老いた女性がやって来て、一輪の花を置き手を合わせる。
「あなたはいつもタロス像に供え物をしているの?」
兄は老女に問いかける。
「ええ、毎日ここへ来てタロスに祈りを捧げているの」
「ねえ、どうして島の人はタロス像にお祈りするの?」
今度は弟が質問する。
「そうね、もし宜しければタロスの昔話を語ってあげるわ」
「わあ、どんな話? 面白そう。早く聞かせてよ、お婆さん」
「いいわ。昔々この島に、ソフィアという美しい王女がいました……」
老女は国をまもった巨人の物語を兄弟二人に語り聞かせた。
最初のコメントを投稿しよう!