砂の巨人

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  浜辺にそそりたつ巨人像。 島に背を向けて北の方向を、カッと目を見開き睨んでいる。 島民はそれを「タロス像」と呼び、守り神として崇めていた。 足元の台に盛られているのは、島で採れた果実や花だ。 誰かが供えていったのだろう。 弟はそっと手を伸ばし、供えた果実を盗み食いした。 「こら、行儀が悪いだろ」 兄は弟をたしなめる。 そこへ老いた女性がやって来て、一輪の花を置き手を合わせる。 「あなたはいつもタロス像に供え物をしているの?」 兄は老女に問いかける。 「ええ、毎日ここへ来てタロスに祈りを捧げているの」 「ねえ、どうして島の人はタロス像にお祈りするの?」 今度は弟が質問する。 「そうね、もし宜しければタロスの昔話を語ってあげるわ」 「わあ、どんな話? 面白そう。早く聞かせてよ、お婆さん」 「いいわ。昔々この島に、ソフィアという美しい王女がいました……」 老女は国をまもった巨人の物語を兄弟二人に語り聞かせた。
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