Chapter 3

2/4
前へ
/66ページ
次へ
まったりと最寄りの街、ラインハルトへと歩を進めつつ、自身の過去へと目を向ける。 アルは半歩後ろを付いてきている。 決して裕福だったとは言えない少年時代、私の楽しみは読書に集約されていた。 もちろん書庫などというものは生家にはなく、近所の地主の息子に頼み込んで、読ませてもらっていた。 「ほらほら、アル。余所見ばかりしていては遅れますよ。」 アルは外界に興味津々みたいですね。 色々な書物を読み漁るなかで、お気に入りというものが当時の私にも見つかった。 ダンジョンマスターの伝記である。 「マスターッ!少しゆっくりと歩いてくれ。色々と見ながら歩きたいんだ。」 この短期間でアルを困らせる喜びに目覚めた私は、頷きながらもペースは落とさない。 伝記の中での彼ら、ダンジョンマスター達は、最後には滅ぼされたり、封印されたり、隷属させられたりと、なかなかにハッピーエンドとはかけ離れた存在だった。 そんな彼らが私にとっての憧れだった理由、それは、力だ。 まさに孤軍奮闘、四面楚歌。 いくら側近く仕えるもの達がいても、それらは皆、マスターの創造したもの達。 自分の力がすべての世界。 幼い私は、純粋な力に憧れを抱いた。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

690人が本棚に入れています
本棚に追加