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雰囲気が徐々に、より陰鬱なものへと変わっていくのを肌で感じながら、アルの腰に手を回し、まったりと歩く。
「マスター。ゆっくりと、慣れて欲しいのではなかったのか。なんだこの手は。」
「いやいや申し訳ありません。あまりにも周りが汚いので、綺麗なものに触れたくなってしまいまして。」
アルを適当にいなすのは、本当に愉快ですね。
「おい兄ちゃん、女と金目…」
「アル。」
消し飛ばしたい衝動を抑えながら、組伏せるに留まらせ、脇へと男を引きずって、無理矢理立たせる。
男はあまりにも一瞬の出来事に、呆けている。
男性のこんな顔を見ても、不快なだけで、満足とはほど遠いのは、言うまでもありません。
「ふう。君にも一応聞こうかな。貴方は今、幸せですか?」
アルの澄んだ瞳に射抜かれて、男の荒んだ瞳が目まぐるしく泳ぐ。
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