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生まれ育った、街灯すら少ない田舎町を、愛用のバイクで走る。
ふもとまで10分、頂上にある天文台の駐車場までは5分とかからない。
天文台がある頂上につくと、すでに夜空は満天の星だ。
リーン、リーン、リーン…
夏の風物詩というべきなのだろう…
夏定番の鈴虫などの鳴き声と、小川を流れる水の音が僕の耳を刺激する。
普通なら天文台に向かうのだけれど、僕は違う方向へ足を向けた。
限られた人しか知らない、秘密の場所へと。
そこに、僕、星野 光(ほしの ひかる)は天体観測をしにきた。
「ちょっと休憩するか…」
僕は独り言をつぶやいて、ブルーシートを敷いて寝転がった。
あれから十年だから、ここに来るのも、もう十回目なのか…と、
ブルーシートに寝転がり、眼前に広がる満天の星を見ながらそんなことを考えていた。
ここには、1年に1度、八月二十日にかならず来ている。
彼女と僕だけの、思い出の場所だから…。
あの夏のことは、今でも全部鮮明に思い出せる。
「懐かしいなぁ~…」
高校最後の夏休みのことだった。
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