夏の思い出①

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それからはとりとめのない話をした。 彼女がキレイな空を見上げるのが好きとか、 先を越されたのは、仮眠を取っていて、寝坊したとか、そんな話。 そういえばこの子、一人で来たのか? 女の子が一人で夜中に出歩くというのは、危ない気がするので質問してみた。 「ここまで一人で来たのか?」 「うん、一人だよ~。エヘヘ」 なぜかはにかんで答えられた。 訳が分からない…でも、結構カワイイ。 「女の子が夜中に一人で出歩くのは…ちょっと危ない気がするな」 今の僕、ちょっとかっこいい気がする!! なんかものすごく紳士っぽい気がする!! 「多分、大丈夫だよ、大阪じゃあるまいし…」 「絶対大阪に偏見持ってるだろ!!」 そりゃ確かに大阪はひったくりとかの犯罪数が全国1位だというけども… 「場所がどこでも危ないって。」 「分かった、じゃあ、もうここに来るの、やめる。」 「え?なんで?友達とか連れてくればいいじゃないか。」 「友達には、その…反対されたんだ、天体観測に来るの。『危ないと思う』って。」 「そっか…残念だな。」 なんてしっかりした友達なんだと心の中で感心する。 「じゃあ天体望遠鏡、貸してやるよ。 そのかわり、今日だけだからな、もう一人で夜遅くに出歩くなよ。 あとこの本を見れば、夏の星座とか、惑星のこと、だいたい分かるから。」 本と天体望遠鏡を渡すと、彼女はものすごくうれしそうに笑った。 カワイイ笑顔だと思ったけど、それ以上に、彼女の笑顔は儚げだった…。 儚げで、綺麗だった。
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