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助っ人としてそのチームと試合するということは、目をつけられるということにもなりかねない。
「頼むよ、漣。こんなことを頼めるのは漣だけなんだ」
しまった、と思った。漣は猛のこの姿勢に弱いのだ。身長百八十オーバーの大男がその巨躯をこれでもかと縮めて頭を下げる姿。唯一無二の親友にそんな姿で頼みごとをされては、いかな効率至上主義の朝川漣でも憐憫の情が顔をもたげてしまう。
「……過度な期待はするなよ」
突き放すような言い方はできない。言葉だけを見れば拒絶に思えるものも、漣が使えば遠まわしの肯定になる。葉桜猛相手ならば、確実に。
「漣!」
それを知っている猛はぱあっと顔を明るくして破顔した。
「ありがとう、ありがとう漣! お前にしか頼めないけど、お前ならやってくれると信じてたぜ!」
陳腐な言葉も猛が使うと真実味が増して聞こえるのは何故だろうか。これも中学時代からの友人だから、で片付けられそうだから恐ろしい。
猛とは彼がやんちゃをしていた時期に色々と手を回したし、また守られた。抗争とやらに巻き込まれたこともあったし、彼が補導されたとき真っ先に警察署に駆けつけたりもした。中学生の青臭い友情ではあったが、そんなドラマみたいなエピソードだらけの付き合いなのだ。他の人間とは一線を画す存在、それに相応しい男だった。
「でもいいのか猛? 俺はストリートバスケの経験なんてないぞ」
「ああ、それは心配いらねえ」
猛はサムズアップして答える。
「普通のバスケのやり方がわかれば大丈夫だ。コートが半分になって、人数が各チーム三人ずつになるくらいだ」
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