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「やれやれ、お互いの力を出しあって競い合うのは、能力の扱いを完璧にする為の……いわば練習試合だったんだけどね」
口を開き、爽やかな声で話すのは蒼い短髪を砂埃が紛れる風に揺らし、笑顔を浮かべる細身の男。
「君はどうやら、日に日に自分の力に蝕まれていっている印象を受けるよウォーリー。きちんと制御できなければ、今後は少しやり方を変える必要があるね」
髪と同じ、蒼の瞳をその目に宿し、彼は焼け焦げた大地に立ち尽くすウォーリーを指差して、淡々と言い放った。
「いや、でもよ……」
「僕とシェリーが来なければ大惨事になるところだ。彼女にも、ちゃんとお礼を言わなければね」
腕を組み、ウォーリーの言い訳じみた発言を一蹴。その隣で腰に手を当てているのは、艶のある茶髪を肩まで垂らす女性。
その彼女の眼前に、空に浮かぶトムの体がゆっくりと下ろされる。
「走馬灯でも見えた?」
「笑えないな、あんたの弟には殺されかけてばかりだ」
茶化すような女性の言葉に苦笑しつつ、トムは蒼い髪の男を見て体勢を整える。
「すまないね」
「ちょっと待ってくれよ兄貴」
三人のやり取りを聞いて、ウォーリーが彼らの側に近づいてくる。すでに瞳に宿った異様な輝きは消えていた。
それを確認したトムは険しい表情で何かを考え始めるが、他の二人は笑顔を見せている。
「俺ァ完全に能力を制御下に置いてる筈だぜ? でも今、おかしいことが起きたんだよ」
「君もか」
蒼い髪の男は、あごに手を当てて隣に立つ女性を見る。すると彼女もまた、同じ思いで視線を返していた。
「君もって……他にも何かあったのかランディー?」
その様子から何かを察したトムは、服の汚れをはたきながら質問を投げ放つ。
「実はね、モーガン君もなぜか力の制御が利かなくなったと言っていた。その時、目に光のようなものが発生したと聞いている」
「それでトーマスの奴、完全にビビっちゃっててモーガンとの能力の出し合いを拒否してるの。男のクセにみっともないわね」
二人の言葉に、トムはよりいっそう表情を険しいものにした。
「実はウォーリーにも、似たようなことが起こっていた」
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