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「俺達ァ、他とは違う特別な力を持った集団だ。ヒヒヒ、今はこうして世間から隠れてるのは、力を蓄える為なんだろ?」
煙草に火をつけ、トーマスの顔に向かって煙を吐く。
それに嫌がる素振りを見せない彼は、アレスの言ったことに驚愕していた。
「力を蓄える……?」
「そうさ。ヒヒヒヒヒッ、ヒッヒッヒッ。能力を完璧に扱えるようになった後は、わかるだろ?」
煙草をくわえ、両腕を左右に伸ばしてトーマスへ言い放つ。
「……なんだよ?」
「殺すのさぁ。ヒヒッ、特別じゃない奴を皆殺しにして、俺達が世界の神になる。当然じゃねぇかよ、ヒヒッ」
「冗談だろ?」
苦笑し、トーマスは水が染み込んだ絨毯を踏みしめて部屋を後にしようとした。
が、木製の分厚い扉は開かない。鍵がかけられているわけでもなく、何かの力でせき止められている。
「ヒヒヒヒヒッ、ヒッヒッヒッ。そんな面白くねぇ冗談、誰が言うかよ。俺は本気だぜ?」
扉を閉ざしているのは、アレスの能力だ。摩擦を操り、扉が開かないよう力をかけている。
「そんなこと、あの兄弟が許す筈がない」
「俺ァ一目で悪人と裏切り者を見抜けるんだ。それで言うと、ヒヒッ、あの兄弟より悪い奴はこの世に存在しねぇと思うぜ?」
口にくわえた煙草を指に挟み、反対の手でサングラスの上から自らの右目を差す。
「お前も、薄々は気がついてるだろ? セレネちゃん」
「悪人はお前だろ。あの兄弟は俺達が世間に手を出す前にここへ召集した。お前のような奴から街を守ったんだ」
「ヒハハハハ! この俺を敵に回したくねぇだけさあいつらは! ヒヒヒ、お前もきっちり能力に磨きをかけねぇと、置いてかれんぜぇ?」
「下らない……」
もう一度ドアノブを引くと、簡単に扉は開いた。どうやら、アレスがかけた摩擦が解けたらしい。
「殺られる前に殺るんだよ。俺達の他にも特別な奴が居て、同じことを考えてたらどうする? ヒヒッ、戦争が起きるぜ?」
「俺達のような奴が他に何人も居てたまるかよ」
そう言って、トーマスは部屋を後にした。
「ヒッヒッヒッ! いるんだよぉ、確実にな」
一人残ったアレスは煙草をくわえてそうつぶやき、鼻から煙を吐いてサングラスを外す。
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