使命

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発言を加えた長身の女性は、緑の瞳に輝きを灯して立ち上がっている男を見る。 短い黒髪を緑のカチューシャで整えており、清楚な風貌。彼女の言葉には、注目するに足るものがあるようだ。 「だからと言って……」 「まぁ落ち着けよガイア。アテナの言う通り、決断する時が来たってだけの話だ。ま、皆殺しは極論過ぎるが、俺は賛成だね。ククク……」 次に口を開いたのは、三人とは最も離れた場所にいる黒衣を纏う男。 濡れているような黒髪を後ろへ垂らし、顎髭をたくわえている。 彼の口から出た名、ガイアとは円卓に手をついている男を指すもので、アテナとは冷静に話す女性を指すものだ。 「それに、俺ら八人で全部の能力者を管理するなんざ不可能なんだよ。殺した方が早いに決まってる」 「黙れタナトス……貴様の意見など私が聞くと思うか?」 タナトスと呼ばれた黒衣の男は、肩をすくめてため息をついた。瑠璃色の瞳が、無意識に殺気を放っている。 会話に入るのを諦めた彼の右隣には、3メートルはあるであろう巨体の持ち主が、無言で座り尽くしていた。 開いているか閉じているかわからない糸目からは、その心情は読みとれない。 さらにタナトスの左隣に座るのは、これまた長身の男。ボサボサの黒髪は全く手入れされず、黒い浴衣を着てうつむいている。 おそらく彼は、口論に混ざる気などないのだろう。浴衣の中で腕を組み、すやすやと眠っている。 「クロノス、本気で能力者を殺すというのなら、私が全力で阻止する。例え貴様と戦うことになろうともだ」 「我が世界……それを知っても尚、戦うなどとぬかすか。我の決定は絶対だ、貴様にはリーダーの座を降りてもらう」 クロノスと呼ばれた銀髪の男がそう言うと、豪邸の外で雷鳴が轟く。 「なんだと?」 「我らエリュシオンの存在意義を否定する者に、統領は務まらん。素直に退けぬと言うなら、相応の対処をしてやろう」 「……アハハ、面白いわね。天空と大地で決着つければ?」 不穏な空気が漂い始めた中で、次に会話へ混ざってきたのは黒のドレスに身を包む妖艶な女性だ。
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