セラフィム

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破片は宙に舞い、渦巻いていた斬撃は虚空に散開。ウォーリーが身に纏う橙色の光は全てを打ち崩し、消し去ることのできる破壊の力。 それが防御の面で扱えるということが、今ここで証明された。 「ヒャハハッ! だから言ったろ? 俺の能力を破れる奴なんざいねぇんだよ」 自慢げに言いながら、全身を覆う光を解除する。同時に大量の霧が発生したようにも見えたが、すぐに無くなった。 その時、 「おっと……!」 光の鎧が失われた瞬間を狙って、一閃の斬撃が彼の横を通り過ぎる。とっさに横へ体勢を仰け反らせたが、その頬には一筋の赤い線が引かれた。 「残念、油断の隙をついたつもりだったんだけどな」 顔の前で人差し指を突き立て、トムは苦笑をこぼし、浅く息を吐いた。 「おいおいヘパちゃんよォ、今のはかなりヤバかったぞ」 「髪を狙ったんだが、無駄に動くから……」 「ヒャハハ、面白れぇ!」 一瞬、笑みが消えたウォーリーだったが、頬から垂れる血を拭った後で、余裕に溢れた表情に戻る。 そして左手を握り絞め、前に突き出して力を込め始めた。 「特別サービスだ、ついこの間気づいた新しい能力を見せてやる」 言い放つ彼の左腕を包み込むのは、先程までとは違う青い光。 それは瞬時に美しい閃光となって、見とれるような輝きを放った後、 「うわッ……!?」 不可視の弾丸と化し、トムを後方へ弾き飛ばす。 「この攻撃スピードを見切れる奴なんざいねぇだろうなァ。大発見だろ? まだまだ俺の能力には、開拓の余地が残されてんぜェ」 凄まじい速度で放たれた青い光の弾丸は、それこそ目では追えないスピードを誇っているが、威力は橙色の光と比べてしまうとまるでない。 「……今のは驚いた。それを扱いこなせるようになれば随分と戦いに幅が出るな」 大樹にもたれて座り込むトムは、咳払いをしながら立ち上がり、服の汚れを叩く。 「もっとも、俺の能力に幅なんか必要ねぇけどな。それを証明する力がこれだァ!」 両腕を左右に広げ、ウォーリーは森全体に響き渡るような雄叫びをあげた。 すると、彼の全身が黄金の輝きに包まれていく。 それは彼の瞳でさえ眩しい煌めきの中に閉じ込め、対峙するトムに寒気を与えるほどの殺気を突きつける。
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