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「お前、目が光って……」
ウォーリーに起きた異変をいち速く察知し、忠告を送るも遅かった。
二人の視界全てが黄金の輝きに埋め尽くされ、地鳴りが響く。
周囲の木々は消滅していき、その中にいた生物には断末魔さえあげさせず、全てを塵と化していく。
「ヤバ……!」
それはトムにも、容赦なく襲いかかった。
「……あら?」
ウォーリーは寸前で能力を解除するつもりだったのだろうが、なぜか止まらない。彼の意思に関係なく、光は周囲一帯を滅ぼしていく。
すでにトムは光の中へ消えた。岩や地面さえ吹き飛ばし、消してしまう高密度のエネルギー放射。人間など、跡形もないだろう。
「マジでヤベェ! やり過ぎたか!?」
慌ててウォーリーは能力を抑え込む。今まで簡単に行ってきたことなのだが、なぜか今回はうまくいかない。
全方位に放射される光を止めるべく全力を出し、自らの力を制御しにかかる。
やがて、彼から放たれる黄金の輝きは森全体を滅ぼす前に解除された。
「……な、なんだ今のァ」
棒立ちで、顔や首に伝う大量の汗に気がつく。どうやら体も、極度の披露によって動かない。
が、瞳の輝きだけは失われてはなかった。その目で辺りを見渡すと、何もない。
彼を中心に巨大なクレーターが完成しており、周囲は焼け野原よりも酷い状態だ。焦げた土だけがある世界。
後少し遅ければ、どれほどの範囲がこの光景になってしまっていたか、彼自身もそれを考えると血の気が引いた。
しかし同時に、歓喜に似た感情が心の隅に芽生える。まだそのことには、ウォーリーは気づかない。
「おいトム! いるかァ!?」
我に返り、さっきまで″じゃれあって″いた仲間を捜す。
今の攻撃に巻き込まれていれば無事で済むはずはないが、
「し、死ぬかと思ったぞ……」
呆れ果てた声は上から。逆さ向きで冷や汗にまみれるトムの姿が、空中にあった。
「おお、生きてたか」
傷ひとつない彼を見て、とりあえずは安堵の表情を浮かべる。
「彼女のおかげでな。ていうか、今のはマジで死んでたぞ?」
トムが示す先には、二人の男女。どうやら異変に気づいたらしく、急いで駆けつけてきたようだ。
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