三分の一夜

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あれは、この店がまだ祖母ちゃんが使っていた質屋のまんまだった頃。 会社を辞めた俺が、最初にしたこと。 それは、祖母ちゃんが遺言で俺に残していってくれたこの場所で、店を開く、その準備だった。 「じゃあ、カウンターはこの幅でいいのかい、坊主。」 俺を坊主呼ばわりしているのは、大工の棟梁。 この近所に住んでいる。 「はい。席はだいたい7~8席くらいなんで。」 「で、こっちの小上がりは残しておく、と。」 会社勤めで貯めに貯めた貯金をはたいて、俺は店の改装を棟梁に依頼した。
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