入学式

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「…よし!!」 今日から新しい一年が始まるため、少し緊張していたけど…ワクワクもする。 目覚ましを止めて、私は身支度を済ませると食事をするため下へと向かった。 「おはようございます。」 「おはよう、千鶴。」 私の父―雪村綱道が既に食卓についていた。 「今日は入学式だな。…うん、似合っているぞ。」 父様は柔らかく微笑むと、私の制服姿を褒めてくれた。 「ありがとう、ございます。」 そういうと、満足げに私の肩を叩いて 「お前は今日から高校生だ。…とお前の入学を祝いたい所なのだが…」 そこまで言うといきなり顔が曇りがかった。 「…どうしたんですか?父様。」 「いや…そのだな。」と歯切れが悪そうに 「…急用で、海外に行くことになった。」 「…え?」 余りにも突然すぎて最初は冗談なのかと疑ったりもした。 「…千鶴には辛い思いをさせるが、頑張ってくれ。」 しかし父が余りにも真剣に言うから冗談で無いことが分かった。 「そんな…」 (私一人でやっていけるのかな…) そんな不安があったが父を困らせてはいけないと思い「はい…」と言わざるおえなかった、 「すまんな…」 「いいえ…どれくらいあっちに居る予定なのですか?」 「…3年位だ。」 (さ、3年も…?) さすがに驚愕を隠せなかった。 「本当にすまない。…分かってくれるか?」 しかし…やはり父を困らせたくなくて「はい…」と言ってしまった。 「…すまない。」 「はい…。大丈夫です。」 と言うと、気まずい雰囲気のまま朝食を終えた。 ・・・・ 「…では、行ってくるな。…元気にしてるのだぞ。」 「はい…。」 父は申し訳なさそうにそう言うと、玄関を出ていった。 (入学式だ、ってワクワクしてたのにな…。) 新しい一年の始まりがまさかの父が海外に…ということだったので戸惑っていたし憂鬱だった。 (はぁ…) そんな思いにふけっていたると… ”ピンポーン!!” (…?) 誰だろう? (…もしかしたら父様、忘れ物したのかも!!) そう思い玄関まで急いでモニターを覗くと 「おはよう!!千鶴ちゃん!!」 という、元気ハツラツな声が聞こえてきた。
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