入学式

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「佳奈ちゃん!!」 その声の子は…私の幼馴染みかつ親友の藤堂佳奈ちゃんだった。 私は急いでドアを開けて佳奈ちゃんを迎え入れた。 「おはよう、千鶴ちゃん!!」 「佳奈ちゃん…どうしてここに?」 確かに…一緒にいく約束はしてなかった気がする…。 「だって幼馴染みだし親友だし…何より同学年じゃない!!」 佳奈ちゃんは””当たり前だ。 と言うように胸を張った。 「…そうだね。ありがとう!!」 「…?私は当たり前の事をしただけだよ…?」 佳奈ちゃんはよくわからなさそうに首を傾げた。 「…う、ううん!!何でもない!!」 「…?そう?変な千鶴ちゃん…。…ま、いいや。朝御飯は食べた?」 「うん。さっき食べ終わったよ。」 「そっか…準備万端?」 「うん。」 「そっか…じゃ、行こっか?」 「うん!!」 「ちょっと待っててね。」と私は再び二階へと戻り荷物を取りに行った。 「…よし、じゃ、行こっか!!」 「うん…ってちょっと待って。」 「ん?」 危うく「うん」と言ったままになりそうになってしまった。 「…平助くんは?」 彼女の兄―平助くんの姿が見えない。 すると佳奈ちゃんは「…あぁ。平助?」とさっきの満面の笑みとは一変して呆れた顔で呟いた。 「アイツならまだ、家だよ。」 「…え?」 「更に言うと、アイツはまだ家で寝てるよ。」 「…。」 「ちゃんと起こしたよ。…けど起きないんだもん。しょうがないよ。…さ、アイツの事は放っておいてさっさと行こう。」 と先に歩こうとした。 「ま、待って…」 「今日は入学式だよ?…アイツなんか待ってたら大事な一歩を遅刻で始めることになるよ?」 「それは…そうだけど。」 と言うと、佳奈ちゃんは呆れたような…だけど優しそうな笑みを浮かべて 「…平助は幸福者だね。こんなに思ってくれる子がいるなんて。」 「そ、そんなことないよ!!…でも、佳奈ちゃんと平助くんはいつも一緒だったから…。」 すると佳奈ちゃんは疲れたように「はぁ…。」とため息を吐いて 「…アイツが危なっかしいから、付いて回ってただけだよ。他意はないよ。」 「そ、そっか…。」 てっきり平助くんが大好きなのかと思ってた。 「…とにかく、学校行こう?…私たちの大事な一歩を平助なんかの為に潰す訳にはいかないんだから!!」 と言うと私の返答を待たずに私の腕を引っ張って走り出した。
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