40人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
南ちゃんがそう言うと、きぃちゃんの顔がいきなり真剣になり、オーラもどことなく怖さを出していた。
「やっぱり…そう思う?」
「う、うん…。」
南ちゃんが少し遠慮がちに言うと、きぃちゃんは"だよね!!"と共感を求めるように南ちゃんの手を握り
「…私も、正直おかしいとは思っていた。…けれど、お兄様には言えなかった。…いえ、今も言えていない。」
「え…?どうして?」
「…傷付いた顔をしたから。」
「…斎藤先輩が?」
きぃちゃんは"こくん"と頷くと、その時のことを懐かしむようにして話始めた。
―霧乃、小学一年生入学式後一日目
"霧乃、今日からお兄ちゃんと一緒に行ってね。…まだお友だちも少ないと思うし、お兄ちゃんと一緒に行った方が安全だと思うから。"
"…わかりました、ははうえ。"
"母上だなんてそんな…『お母さん』で、いいのよ?"
"いえ、ははうえのほうがしっくりくるので…"
"そ、そう…とにかく、今日からお兄ちゃんと一緒に行くのよ?"
"はい。"
最初、きぃちゃんは小学校一年生の時、斎藤先輩がきぃちゃんと一緒に行くのは"自分が迷わないように仕方なく"と思っていたらしい…が
―霧乃、小学校五年生
"お兄様、私はもう一人で行くことが出来ますから…お兄様はお友達と学校に行って戴いても構いませんよ?"
すると、斎藤先輩は少し悲しそうな顔をして
"霧乃は…俺が嫌いか?"
と聞いてきたらしい。
"そんなことは申しておりません…しかし、お兄様がしたいことを私が邪魔してしまっているのでは…?と思いまして。"
"そんなことはない。…俺は自分のやりたいようにやっているだけだ。…寧ろあんたの方に嫌気が差しているのではないか?"
"私がお兄様に?…どうしてです?そんなことはあり得ません。"
すると、やっと"ホッ"とした顔をしてくれたのだと言う。
「私はそれ以来、お兄様に"私のことは気にしないで"…と言えなくなってしまった。…私が言えたことでは無いけれど、あのどんな事態でも少しも表情を変えないお兄様が、私の一言であんなに変わるなんて…相当傷付いたのかもしれない…。」
言ってる霧乃ちゃんの方が傷付いたような顔をしていた―きっと、自分が言ってしまったことを後悔しているのかもしれない。
「で、でもさ、霧乃ちゃんは傷付くと思っていなかったんでしょ?…わざとじゃないならしょうがないと思うな。」
最初のコメントを投稿しよう!