合宿~1~

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南ちゃんがそう言うと、きぃちゃんの顔がいきなり真剣になり、オーラもどことなく怖さを出していた。 「やっぱり…そう思う?」 「う、うん…。」 南ちゃんが少し遠慮がちに言うと、きぃちゃんは"だよね!!"と共感を求めるように南ちゃんの手を握り 「…私も、正直おかしいとは思っていた。…けれど、お兄様には言えなかった。…いえ、今も言えていない。」 「え…?どうして?」 「…傷付いた顔をしたから。」 「…斎藤先輩が?」 きぃちゃんは"こくん"と頷くと、その時のことを懐かしむようにして話始めた。 ―霧乃、小学一年生入学式後一日目 "霧乃、今日からお兄ちゃんと一緒に行ってね。…まだお友だちも少ないと思うし、お兄ちゃんと一緒に行った方が安全だと思うから。" "…わかりました、ははうえ。" "母上だなんてそんな…『お母さん』で、いいのよ?" "いえ、ははうえのほうがしっくりくるので…" "そ、そう…とにかく、今日からお兄ちゃんと一緒に行くのよ?" "はい。" 最初、きぃちゃんは小学校一年生の時、斎藤先輩がきぃちゃんと一緒に行くのは"自分が迷わないように仕方なく"と思っていたらしい…が ―霧乃、小学校五年生 "お兄様、私はもう一人で行くことが出来ますから…お兄様はお友達と学校に行って戴いても構いませんよ?" すると、斎藤先輩は少し悲しそうな顔をして "霧乃は…俺が嫌いか?" と聞いてきたらしい。 "そんなことは申しておりません…しかし、お兄様がしたいことを私が邪魔してしまっているのでは…?と思いまして。" "そんなことはない。…俺は自分のやりたいようにやっているだけだ。…寧ろあんたの方に嫌気が差しているのではないか?" "私がお兄様に?…どうしてです?そんなことはあり得ません。" すると、やっと"ホッ"とした顔をしてくれたのだと言う。 「私はそれ以来、お兄様に"私のことは気にしないで"…と言えなくなってしまった。…私が言えたことでは無いけれど、あのどんな事態でも少しも表情を変えないお兄様が、私の一言であんなに変わるなんて…相当傷付いたのかもしれない…。」 言ってる霧乃ちゃんの方が傷付いたような顔をしていた―きっと、自分が言ってしまったことを後悔しているのかもしれない。 「で、でもさ、霧乃ちゃんは傷付くと思っていなかったんでしょ?…わざとじゃないならしょうがないと思うな。」
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