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昔おじいちゃんによく、世界は裏と表で二つで一つなんだよ、という難しい話を聞かされたことを覚えている。表舞台にいる自分がピンチになった時は裏舞台にいる自分が引きずり出されるという、まるで身代わり人形のような話だった。おじいちゃんは「わしゃあ昔は表舞台で活躍してたんじゃがなあ……」なんていっていたのを鮮明に覚えている。そのときの私はまだ幼かったから難しいその話は到底理解できずにはいたのだけれど、私は表と裏どっちの人間なのかなあなんて暢気なこともいってたんだけども、今やっと理解できた気がするのだ。
本音をいうと一生理解したくなかったんだけど。
簡単に言ってしまば、簡単に言えるような内容でもないのだけれど、私は裏舞台の人間で、表舞台の人間が絶賛ピンチ中ということで引きずり出されたらしい。
表と裏での違いはあるが自分であることに変わりはないわけだが、迷惑以外の何者でもない。こちとら花盛りの10代エンジョイ中にこんなことされちゃたまったもんじゃない。入試に合格して大学に入学する前夜でやっと楽しくなってきたのだ。なのに誰が好き好んで表舞台にでなきゃいけない。
誰が裏と表の世界なんてつくったんだ、ふざけるな、なんて考えても現実は変わらないのだ。
そう、表舞台の私はピンチだったから裏舞台の私が引きずり出され位置交換という形になったらしいので、まあハッキリいってしまえば?私は今非常にピンチな状況なのだ。私はすごろくでゴールがもう少しで楽しい時期にスタートに戻るマスをふんでしまったような気分だった。
ということで絶賛ピンチな私、何がピンチかっていわれても困る。私だって表舞台に引きずり出されたばかりで現状をすべて理解しているわけではないのだから。
一つだけ確かなことがあるといえば、目の前にガガガガと危険な音を鳴らすチェーンソーを構えている男が今にも私を殺そうとしている、ということだけだった。
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