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よく見れば騒音を出す煩わしいチェーンソーには赤い液体がこびりついており、私に現実を突きつけるのはいとも容易いことであり、これから私は殺されるということを、これから身をもって教えてくれるらしい、ノーセンキューだよといってもチェーンソーにそんなものは通じないわけだ。
まあ要するに赤い液体がこびりついているということはこのチェーンソーの餌食となった何かが前にもいるということで私もそうなるよっていうことだ。所謂私は目の前にいる殺人鬼に殺されるのだ。
「名前はわからないから、彼、いや、彼って呼ぶのは変。そう、殺人鬼さん」
どうせ殺されるなら顔をしかとこの目に焼き付けてみたいきもするわけだが、生憎殺人鬼さんは黒いフードを被っていて顔が見れない。悔しい。それならせめて、ということでですね殺人鬼さん。
「声ぐらい、聞かせてくれても良くありません?」
だってずっと無言だし、と付け加えて。ああ、私なんて自殺行為してるんだろうとも思いながら。
殺人鬼さんの口はゆっくりと開いた。
「死ね」
「あら、素敵な声してるじゃない」
表舞台にたって初めて言われた言葉は死ねだった。
殺人鬼さんの腕が振りあがる、同時にチェーンソーも振りあがる。
ぎゅっと目を閉じて、痛みがくるのをまつ。
痛みはいつまでたってもこなかった。
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