1 君と出会った一日目

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目が覚めたら実は裏世界に戻っているんじゃないかって期待していた自分がいたことは否定しないけど、やっぱり今の状況は昼か夜かもわからない殺風景な部屋を見てああ、嘘じゃないんだ現実なんだと思い知らされた。 「今何時だろ……」 ぽつりとつぶやいたところでこの部屋には誰もいないので返事をする人間なんていないし私の声を拾う人間もいない。 その時、ぎゅるるるるとマヌケな音が部屋に響いた。 誰かいるってわけでもないのに少し恥ずかしくなりながらお腹空いたなあと思った。そしてドアの前にちょこんと置かれている何かに気づいた。 少しかけたお皿に乗っているのは2枚の食パンだった。 じーっと少し食パンを見つめてから、かんがえる。 食べるか食べまいか、どうするべきかを。 そしてまるでタイミングを見計らっていたかのようにもう一度、そして先ほどよりも大きくお腹の音が鳴る。 「食べよ……」 そうして得体のしれない食パンに遠慮がちに手を伸ばした。どうせさっきまで死ぬかもしれない現状に立たされていたのだから、後は余生とでも考えよう。このパンに何がはいっていたって別に気にすることじゃない。 食パンを手に取って「いただきます」と呟いてから齧り付いた。 よく噛むようにして咀嚼する、何も味のしないジャムなんてものはつけてない、バターだってついていないこんがり焼いてもいないただの食パンだったけど、すごくおいしかった。憑りつかれたみたいに延々と食パンを食べ続け、二枚の食パンなんてすぐに私の胃袋の中に納まってしまったが、空腹ということはなくなった。 「ごちそうさまでした」 そう呟いてから、誰もいない部屋で誰も聞いていない部屋で「ありがとう」と殺人鬼さんに向けて仕方がなく言ってやった。
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