プロローグ

2/4
前へ
/20ページ
次へ
ロイティア王国サリア領。 人口3000人程度の雪で覆われた小さな、しかし精霊に愛された土地だ。 それが私のいるサリア領の評価。 「…寒い。 ……死ぬ」 8月1日、まだまだ夏真っ盛りのこの日も、サリア領は真冬並みの寒さで、私の風邪を長引かせていた。 ーー愛し子病気ーー ーー死なないでーー ーー愛し子つらいーー 「只の風邪よ。 死なないわ」 ーー死なないわ死なないわーー ーー愛し子病気ーー ーーほんと?ーー 「本当よ。 心配なしないで」 私の一言に一喜一憂する精霊たち。 私がそんなそんな精霊を見て内心悶えていたところ、来客を告げるノックの音が響いた。 「スノウ、入りますよ」 「お母様 どうなさったのですか?」 私の元にやって来た母は普段に比べ、機嫌が良さそうだった。 「最近スノウの体調も良いし、15にもなって1度も領内から出たことがないでしょう? ですから王都の学園に通って知識を広めるのが良いと思ったの。 明後日入学試験があるから行ってらっしゃい」 そう言って笑う母と違い、精霊たちの取り乱しぐわいはひどかった。 ーー愛し子行っちゃうのーー ーー愛し子ーー ーー愛し子~ーー ーー悲しいよーー 私以外に精霊は見えていない。 今日ほどその事に感謝した日はない。 それほど精霊の騒ぎはひどものとなった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加