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ロイティア王国サリア領。
人口3000人程度の雪で覆われた小さな、しかし精霊に愛された土地だ。
それが私のいるサリア領の評価。
「…寒い。
……死ぬ」
8月1日、まだまだ夏真っ盛りのこの日も、サリア領は真冬並みの寒さで、私の風邪を長引かせていた。
ーー愛し子病気ーー
ーー死なないでーー
ーー愛し子つらいーー
「只の風邪よ。
死なないわ」
ーー死なないわ死なないわーー
ーー愛し子病気ーー
ーーほんと?ーー
「本当よ。
心配なしないで」
私の一言に一喜一憂する精霊たち。
私がそんなそんな精霊を見て内心悶えていたところ、来客を告げるノックの音が響いた。
「スノウ、入りますよ」
「お母様
どうなさったのですか?」
私の元にやって来た母は普段に比べ、機嫌が良さそうだった。
「最近スノウの体調も良いし、15にもなって1度も領内から出たことがないでしょう?
ですから王都の学園に通って知識を広めるのが良いと思ったの。
明後日入学試験があるから行ってらっしゃい」
そう言って笑う母と違い、精霊たちの取り乱しぐわいはひどかった。
ーー愛し子行っちゃうのーー
ーー愛し子ーー
ーー愛し子~ーー
ーー悲しいよーー
私以外に精霊は見えていない。
今日ほどその事に感謝した日はない。
それほど精霊の騒ぎはひどものとなった。
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