僕とタローさんの日常

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父は死ぬまで、ここで動物病院を営んでいました。 住居と一緒になった作りですから、個人の小さな動物病院でした。 けれど近所の住民にも、犬にもとても親しまれていていましてね。 飼ってる犬が病気でなくても、散歩の途中で立ち寄っていく人も多かったんです。 僕はそんな父が大好きでした。 ただ、残念な事に一緒に暮らしては居なかったので、父と過ごした時間はほとんどありませんでしたが。 まだ子供の頃に両親が離婚した為に、母親に引き取られた僕と父が会えるのは年に一度だけ。 それが父と母の約束だったみたいです。 父が亡くなった後、この病院を無くしてしまうのが嫌で、無理矢理継いだのは良いのですが、僕は資格も持っていない素人です。 誰か人を雇ったりするしか無いのかと思案していた時に、タローさんが言ってくれました。 『坊っちゃんの能力を生かしてやれる仕事をしたら良い』 それからタローさんは、いつでも僕の側で支えてくれているのです。
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