二章『最初の試練と試験』

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メノーア『だからぁ…。』 不意にハルトの視界が反転。 身体は宙に浮き上がる。弾き飛ばされたように、何も分からぬまま芝生に落とされる。 ハルト『ッ…え、あ?』 メノーア『勇者を名乗るなら、何にでも精通しなければならないの…。』 メノーア『武器をなくした時の戦い方も同義…。』 彼の腕をやんわりと掴み、身体を起き上がらせる。 メノーア『今、何されたか分かったぁ…?』 俯くハルト――分かる訳も無い、理解も、思考の回転も、身体すらも動かなかったのだから。 ハルト『…い、え……。』 メノーア『…私はね、小さいころからずっと戦い方を学んで来たの。』 メノーア『どうやって戦うか、どうやって魔物を倒すか…どうやって強くなるか。』 メノーア『そんなことばっかり、ねぇ…?』 イルネス『メノーア…。』 メノーア『だからね…貴方達みたいな甘いことしてる人を見るとね…。』 イルネス『メノーアッ!余計なことは言わなくて良い!』 メノーア『…っ!』 ハルト『!?』 唐突にイルネスの罵声が演習場に響き渡る。 メノーア『…ごめんなさぁい…ちょっと、頭に血が登ってたわぁ…。』 ハルト『い、いえ……。』 今の…何だ。 甘いこと?…俺は、甘いことをしてるのか? そんなこと、微塵も思ったこと、無いのに…。 メノーア『…イルネス、ごめんなさぁい…ハルト君、合格で構わないわぁ…。』 ハルト『え…?』 イルネス『…そうか、分かった。』 何も分からぬまま、合格――…そんなの納得出来ない。然し、拒否も出来ない。 ハルト『っ…メノーアさん。』 メノーア『…?…なあに?』 ハルト『…オレ、甘くなんか、ないですから…。』 暫しの、沈黙。 メノーア『……そぉ。』 ――遠くない日に、きっと分かるわぁ…。 そう、言い残し、メノーアは演習場を静かに去る。
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