二章『最初の試練と試験』

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ハルト『………』 イルネス『…気にするな、アイツはああいう奴なんだよ。』 ハルト『…あの人は、何を抱えてるんですか?』 イルネス『…抱えているか…抱えているとすれば、それは。』 “傷”だ。 ――――― ハルト『………』 アイツはな、勇者に相応し過ぎて、そして強過ぎたんだ。 強過ぎた…? そうだ、強過ぎが故に、勇者を止めた。 勇者を、辞めた……何故ですか? 強過ぎて、強過ぎて…魔物よりも恐れられたら、貴様ならどうする? それは……そんな、こと…。 答えは一つ、殺すんだよ。勇者をな――。 それを防ぐ為に、アイツはここで教官をしてるんだよ。 ハルト『…勇者を、殺す……。』 暗い地下からの階段を上がる中、小さく声が木霊する。 ハルト『…勇者を、殺すなんて…そんな…。』 キリナ『何を、殺すって?』 ハルト『!?…あ、いや…何でもないよ…。』 赤く長い髪を揺らし、ハルトの顔を覗き込む。 キリナ『ふぅん…?…ま、良いけれど…とりあえず合格おめでとう。良かったじゃない。』 ハルト『…あ、うん…ありがとう。』 キリナ『…浮かない顔してるわね…イルネス教官に何か言われたんでしょ。』 メノーアさんに、と言っても信じてはくれないだろう。 ハルト『…あの、さ…キリナ、さん…だよね?』 キリナ『?…何よ。』 ハルト『…メノーアさんって、どんな人なの?』 キリナ『…メノーア教官?…あの人は、簡単に言えば…。』 キリナ『…変人、かしら…。』
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