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ハルト『ぶっはぁッいってえッ…!』
背中に浅く刺さる一本の矢、ダメージは半減とならず。
『……もうちょっと器用に避けろよな。』
ノア『…前言撤回。』
『うわぁ…痛そう…。』
やった本人達は実に他人事らしき言葉。
ハルト『このッ…何するんだよっ!賊じゃないって言ってるだろっ!』
ハルトは剣を腰より引き抜き、応戦の構え。
『お?やっこさんやる気だぜ?』
ノア『……行ってきたら、戦ってみたいんじゃない。』
『ああ…そうだな…いっちょ――』
比較的長身の男は背中の鞘より、ハルトの持つ剣より遥か大きい大剣を引き抜き―
『先輩が、勇者の試練を与えてやろうかね。』
不敵に笑う。そして、時計塔の上より跳躍。
ハルト『な…飛んだ…っ!』
時計塔から中庭まで、約数十メートルあろう高さを飛び降り――
トンッ…!
軽々と着地。
『よぉ、泥棒さん――ちょーっとお兄さんと』
ブゥン…!
長身の男が大剣を彼の目の前に、風切り音を鳴らし、片手のみで振り下ろす。
『遊ぼーぜ?』
ハルト『ッ……。』
コイツ―…ここに居るってことは、学校の生徒…?
だったら、マズい…勝てる訳が無いじゃん…。
ハルトの剣を持つ束が金属音を鳴らす、手の震えから来る音だ。
『おいおい…そう怯えんなよ…なあに、何もヤる訳じゃねえ…ちょっとお仕置きするだけだ。』
『さあ、来いよ…この勇者志願のバーチャ様がお相手してやる…光栄に思いな。』
ハルト『…っく……。』
震えが止まらない…コイツ―…絶対強いよ…。
こんなことになるなら…こんなところに来なきゃ良かっ――。
じゃなきゃ――…母さんの作るミルクティー…作って上げないよ。
ハルト『――るんだ。』
バーチャ『あん?』
ハルト『オレは…みんなの助けになって、母さんのミルクティーを…腹一杯飲むんだ…。』
ハルト『こんなところで…やられてたまるかよ…っ!』
ギリ…
剣を握る力が込められる。眼差しも、また然り。
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