回想、一。

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 それとも「お年頃」と言うものだろうか。  少しだけ頬に熱を感じて、だけど愛には知られたくないから僕は下を向いた。  優しい彼女はきっとこてりと首を傾げているんだろう。……ああ、でも今は僕の顔を見ないでほしい。  だから、僕は気づいて上げられなかった。愛の顔を見ていなかったから。 「……愛、早く帰らないと雨が降ってきちゃうよ」 「………。……そうだね。叶くんも早く帰らなきゃ」  風邪引いちゃうよ、と言った愛の声はとても優しく僕の耳に入ってきて、僕はそれが恥ずかしいながらも……嬉しくて。  それに満足した。だから気づいて上げられなかった。  この僅かな時のことを、僕は遠くない未来、何度も思い返して考える。  愛は、どんな顔で言ったのだろう?  それからしばらくはずっと雨だった。  一週間ずっと雨。  雨の日は愛と一緒に学校まで行く、学校から帰る登下校がなくなってしまうからつまらなかった。  愛は雨の日、必ず車で登下校する。  車から一歩も歩くことすらなく、父親に背負われて、濡れた地面を一切踏むことなく教室まで来る。
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