愛殺し。

2/2
前へ
/51ページ
次へ
それは、まだ幼い顔つきの少年だと言う。 感情に色はなく、声音に抑揚もなく。 狙われるのは、条件が揃った“女の子” 「―――ねぇ?君が……“愛”ちゃん?」 女の子であること。 血の繋がる父親がいないこと。 癖っ毛であること。 名前が“愛”であること。 「?……うん。そうだよ」 笑った顔に“あの子”の面影がある子。 「………そう…」 ニュース速報が、テレビの上部に軽快な音とともに現れる。 また“愛”ちゃんが殺されたと。 ウィンドウに置かれたテレビから少年はそれを見る。 ―――これで、三人目。 すっかり笑えなくなってしまったその無表情で、そうっとウィンドウに触れた。 「………後、何人なのかな………“愛”……」 抑揚のなかった声音は、その名を呼ぶときだけ、たったひとりだけの“愛”を呼ぶときだけは想いに溢れていた。 愛と、哀に。 ウィンドウに触れた手が震える。 全国各地、九州から始まった“愛殺し” それと同時に消えた、中学生。 これは、その少年のはじまりの、はなし。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加