2人が本棚に入れています
本棚に追加
それは、まだ幼い顔つきの少年だと言う。
感情に色はなく、声音に抑揚もなく。
狙われるのは、条件が揃った“女の子”
「―――ねぇ?君が……“愛”ちゃん?」
女の子であること。
血の繋がる父親がいないこと。
癖っ毛であること。
名前が“愛”であること。
「?……うん。そうだよ」
笑った顔に“あの子”の面影がある子。
「………そう…」
ニュース速報が、テレビの上部に軽快な音とともに現れる。
また“愛”ちゃんが殺されたと。
ウィンドウに置かれたテレビから少年はそれを見る。
―――これで、三人目。
すっかり笑えなくなってしまったその無表情で、そうっとウィンドウに触れた。
「………後、何人なのかな………“愛”……」
抑揚のなかった声音は、その名を呼ぶときだけ、たったひとりだけの“愛”を呼ぶときだけは想いに溢れていた。
愛と、哀に。
ウィンドウに触れた手が震える。
全国各地、九州から始まった“愛殺し”
それと同時に消えた、中学生。
これは、その少年のはじまりの、はなし。
最初のコメントを投稿しよう!