深夜の廃屋にて。

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 廃屋。崩す直前の建物。  窓も何もなく、後は役割果たす機械を操作する人間の手によって、その建物は建物と言う命を閉じる。  ひとつ歩くように古びたそれに足を擦らせば舞う埃、砂、塵。  学生服を纏い、目の前の汚物と言う人間、中年男性の後頭部を掴んでひび割れた壁にその頭を叩きつけてやった。  呻くような声が息を吸いたくて喉を詰まらせた。  それにすら嫌悪して、足元から憎悪が血とともに巡った。吐きそうなくらいに、冷たく、祭りのように。  衝動のまま、腕を引いて、もう一度そいつの頭を同じところに叩きつける。  「が……っ」と憎くて憎くて堪らないそいつが漸く口から音を漏らした。  額から血を流して、流して。  嗚呼、やはり僕くらいの腕力じゃ死なないか。  中学生、とは言え部活も何もしていない僕は基本的に無力だ。  叩きつけた壁にこいつの血が踊り描かれて激しく不愉快。苛々する。  白い頭をずるりと引っ張って桟のない、窓だった、今となってはただの穴と化した そこにこいつの上半身を乗り出させる。  ぽたりぽたり。  こいつの血が下に垂れ、地に落ちる。  地を潤す役目を果たすのは雨の役目だ。
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