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そして愛は当たり前のように僕の隣にいるようになり、僕もまた愛の隣に当たり前のようにいた。
帰る方向が同じだから、登下校は一緒。
特に待ち合わせの時間指定や場所指定もしていないが、真ん中から裂けての分かれ道、その中央に立つ電柱に僕か愛は毎朝お互いを待って、毎日そこで別れていた。
そして下校中。じめじめした空気が肌に触り、まとわりつくような空気が靴下と制服の半ズボンの間から感じ取る。
きっともうすぐ、雨が降ってくる。
急いで帰らないと、と僕は隣で赤のランドセルを揺らしながら歩く愛を見た。
「愛、もうすぐ雨が降ってくるよ。雲がどんよりになった」
「……ああ、本当」
ふ、と僕の言葉に沿うように愛は厚い雲が広がる空を見上げ、それから視線をおろして、僕を見た。
「叶くんの綺麗な茶色の髪が、少し暗いね」
「僕の髪は天気予報じゃないよ」
「私の中では天気予報みたいなものだよ?晴れてる時は叶くんの髪、とっても綺麗にお日さまと仲良しだもん」
きらきらのぴかぴかだよ、とまるで絵本の一文のようなことを言って、愛はにこっ、と笑った。
顔に熱を感じて目を逸らしてしまうのは、僕が自意識過剰だからかな。
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