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「次は何処へ?」
「ん? ああ。大体の目星はついたから、近いうちにまた動いてもらうさ。具体的な内容は追って伝えるよ」
「了解した」
平坦な声でそう言って、男も
部屋を後にする。背中から声をかけられた。
「君さ、このまま僕の下につかない? 僕なら君の望むままの報酬を用意できるよ」
「何度も言わせるな。俺達は皆、自分の望みがあって貴様と手を結んでいるだけだ。不利益を被ると判断したらその場で見限る」
背中越しに覗く金の瞳。そこから放たれる威圧感に、青年は少したじろいた。
それ以上は何を言うこともなく、男は消える。
「ちっ、使えない奴。所詮影で殺して回ることしかできない暗殺者ふぜいが……」
怒りに唇を噛んだのも一瞬。すぐに笑顔になってステンドグラスに向き直った。
そこには教会と同じように、神話に基づいた内容が描かれていた。
逃げ惑う人々と滅びの危機に瀕した天地。その上に、元凶たる魔の存在が怪物の姿をとって表されている。
その魔に立ち向かう、一人の戦士。スポットライトを浴びるかのように、星の光に照らされていた。
魔神と星の英雄。千年前に起こった闘争。
「あと少し……あと少しで、僕が王になれる」
野心を隠すことなき呟きが、静かに響いた。
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