SUMMER SCHOOL DAYS

8/42
前へ
/493ページ
次へ
「【氷姫の吐息(スーフル・ネージュ)】」 組んだ手の隙間から、低温の白い霧を天井に噴射する。それは重力に従い降りてきて、ワタル達の周りの気温を下げた。これをまともに人に当てると涼しいどころか、風邪をひきかねない。本来は消火用の魔法なのだ。 校則には『修練室及び教師の許可無く魔法を使うことを禁止とする』とあるが、ぶっちゃけ教師の目の届かない場所で魔法を使うなどしょっちゅうだ。担任曰く「ばれなきゃ問題ねぇ」である。 訪れた涼しさに安堵の表情を浮かべるワタル達。そこでようやく、授業の終わりを告げる鐘(チャイム)が鳴った。次第に教室の外も騒がしくなってくる。 「ほら、闘技場に行こ!」 「わわっ」 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」 ノエルがリナとシノンの手を引っ張って、廊下に消えていく。それを追って男子三人も歩き出した。闘技場の通称で呼ばれる第一修練室遠いので、もたもたしてたら休み時間中に間に合わない。 「けど、このくそ暑い中でも得することはあるよなぁ」 「得すること?」 レウスの言葉に疑問で返すと、彼は前を歩いている女子達を指差して、だらしなく頬を緩めていた。
/493ページ

最初のコメントを投稿しよう!

965人が本棚に入れています
本棚に追加