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聞きたいことはそれだけだったようで、ハルクが出ていってから数時間後。回復したワタルは学園を出て、寮へと向かっていた。
ラーサーからのメールによると、クラスマッチの全試合が終了した時点で担任のゼルがSHRを開いて即刻解散させたらしい。
「あの人らしいと言えばらしいけど」
些か薄情ではないかと、言葉にせず思う。せめて勝利に沸いた教室で皆と喜びを分かち合いたかったのだが、自分一人を待ってもらう訳にもいかないだろうとワタルは自分を無理矢理納得させた。
既に空は茜色が昏い青色に侵食されかかっている。輝きの薄い月が低い位置に浮かんでいた。
通いなれた道をいつも通りに歩いて玄関に辿り着く。寮鑑に挨拶してから無駄に大きなロビーを抜けて階段へ。一段目に足をかけたところで、
通信機に、新たな着信があった。
「……シノン?」
意外な相手だったため、思わずその名を声に出してしまう。
アドレスは交換しているが、今まで一度もあちらからメールなり通信なり来たことがない。そんな彼女から、今から大至急部屋まで来いとのお達しがあったのだ。
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