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「そこのバカ二人。ただでさえ騒がしいんだから、その上に辛気臭い空気出さないで。部屋に染みついちゃうでしょうが」
鬱陶しそうに前髪を掻き分けながら、いつも以上に辛辣なことを言ってくる部屋の主。眉間の皺は深い。つついただけで破裂しそうな爆弾のようだ。
「へいへい。悪かったな」
「ふん」
顔を背けて、シノンは台所へ消えていった。彼女に聞こえないように、ワタルはラーサーに耳打ちする。
「……なんで場所あいつの部屋にしたんだよ。どうみても地雷源に足踏み入れたとしか思えないんだけど」
「ノエルさんが言うには、奇襲を受けてあわや脱落するところまでいったようですから、機嫌が悪いのはそれが原因かと」
「要は八つ当たりじゃないか」
「説得には骨が折れましたがね。ですが、シノンさんからのメールに『もしかして俺にも春が?』と胸を高鳴らせた挙げ句、祝勝会と知って落胆するワタル君を想像すると、つい熱が入ってしまいまして」
「……そんなわけあるか」
驚きが顔に出なかったのは奇跡と言って良い。気持ち悪い汗が流れている。まさか予想通りの心境だったなんてこのエルフに知られたら、確実にからかわれるネタにされる。
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