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「楽しそーだなオイ」
「こういうときのワタルの反応はウブで毎回飽きないもんね。何でもないような振りしてどぎまぎしてるとことか特に」
「……放っとけ」
仏頂面になるワタルとそれを見て更に笑うノエル。それからノエルは座り込み、テーブルに上体を預けた。はぁ、と吐息が小さく漏れる。
「……ノエルちゃん疲れてる?」
「あー……、ちょっとね。あたしも相性悪いやつと当たっちゃってさ。結構苦労したんだ」
乾いた笑いでやり過ごすと、ノエルは顔を背けた。なにやら小声でぶつぶつ呟いている。
「(──いや確かに罠にかけたあたしも悪いかもしれないけどさ、だって五食限定の特製プリン食べられる最後のチャンスだったのに……。大体あのバカ猫が執念深すぎるのが──)」
どんよりとした空気。喧騒のせいで内容までは分からないが、なんとなく聞くのは躊躇われる。
「何があったんだろう」
「うーん。ノエルちゃん、祝福会の前にD組のナミって子に呼び出されてたから、そこで何か言われたのかも……。大丈夫かな」
「多分問題ないんじゃないか? どっちかと言うとアレ、落ち込んでるっていうより呆れてるだけだろ」
「ワタル君よく分かるね」
「誰かさんを相手にすると、俺もああなるからな。何かこう、通じるものがあって──」
「ほっほう。その誰かって誰のことかしら?」
「相変わらずの地獄耳で安心した」
問答無用と言わんばかりに打ち出されたシノンの拳を、掴んで拮抗する。さりげなく身体強化も使った本気の力比べだ。
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