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『評議会』と呼ばれる組織がある。
ギルドにおける財政運営を担う組織。『五星剣』と立場の上では対等だが、『評議会』の大半はそれを快く思っていない。
彼らは皆、かつて高ランクのギルド員だった者達だ。若い頃に得た武勲によって今の地位を得た彼らは、未だに現役である『五星剣』の面々を下に見ている節がある。
過去の栄光とは、それこそ財宝よりも目を眩ませるものだ。しがみついて、固執して、自尊心を肥大させる。もしギルドマスターがあの英雄でなければ、立場の改善を要求していたかもしれない。
そして、ナダル=ウィズドリーもまたその一人だった。王都から遠く離れた別荘で、休暇を満喫していた。
そう。して“いた”。
「はっ、はっ、は──……」
浅い呼吸を繰り返し、老人──ナダルは腰を抜かしたまま視線をさ迷わせる。足下に転がるのは、彼が雇った私兵たちだ。とある事情でギルド員ではないが、Bランクに相当する強者を数十人配置していた。
それが、例外なくその生命を終えていた。ナダルの目の前にいる一人の男によって。
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