理由と変化

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「この男が盗んだものは?」 「きちんと確保しましたよ。貴方が警備を全て引き付けておいてくれたお陰で、簡単に手に入りました。金庫のロックも随分と杜撰でしたしねぇ」 バランは厚い紙の束を見せつける。ナダルが持ち出したのは、とある計画に必要なレポートだった。 ナダルは評議会の立場を利用してバラン達の組織に資金を提供していたのだが、ある日このレポートを持ち出して逃亡。結果、裏切り者として処分されたのだ。 「しかしまあ、悠長と言いますか。呑気に休暇を取ってる暇があったら国外に逃亡すれば良かったのに」 「いきなり動けば怪しまれると思ったのだろう。ここまでの数の護衛を雇っていたのも、襲撃される可能性を考えていたからだろうな」 組織のしていることが恐ろしくなったのか、或いは王国に告発して、その功績で更なる地位を得ようとしたのかは分からない。 しかし、そもそもギルドを欺き内通していた時点で悪人であるのは変わらないのだ。一度協力すると言った以上、裏切れば待つのは死だけである。
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