理由と変化

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ふと、バランは思い出したように問うた。 「そう言えば、『影の民』のお仲間の勧誘には失敗したそうですね」 「構わん。元より計画に必要なピースというわけではない。それに──いずれアレは、自ら望んで俺の下にやって来る。どうあろうともな」 そう断言した『影の民』の男はバランを気にも止めず、死体の山ができた部屋を出た。男が踏んでいるはずの血の池は僅かの音もたてず、波紋だけを広げている。 そこへ、【念話】による通信を受けた。 『やあ。そちらはどうなった?』 「仕事は済ませた。今からそちらに向かう」 『ハハハ。それは結構だ。あの老いぼれ、僕のことが気に食わないのか会うたびにいちゃもんをつけてきたからね。居なくなって清々したよ』 念話相手の話に耳を傾けることなく、足下に転移の魔法陣を展開する。後ろではバランも同じことをしていた。 転移先は王都のとある屋敷。本来王都はギルドや学園と同じように、外からの無断転移を封じる結界が張られてあるのだが、この屋敷に座標を指定したときだけは通り抜けられるように細工がしてあった。無論、王国には無許可で。
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