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炎天下の中を歩くこと五分、寮のロビーに着いた。冷房が効いて冷たい空気が屋内を満たしていて、入った瞬間に少し鳥肌が立った。
「はぁ、生き返る。外出たくねー」
「言い出したお前がそれでどうするんだよ。気持ちは分かるけどさ」
「心配しなくても中止なんてしねえよ。今日は思いっきり遊ぶぜ!」
どこに行くかを話し合っている内に、いつの間にか五階に来てしまった。レウスと一旦別れて、ワタルは自分の部屋に入る。
「……ん?」
珍しく、ドアに付いているポストから黄色い便箋が飛び出しているのが見えた。差出人には心当たりがある。というか、今まででも一人しかいない。
「やっぱ母さんか」
少し辟易しながら、手紙を持ってベッドに腰かけた。
月に一度、こうして母親から手紙が来る。しかしその中身の大半は宿泊客への愚痴だったりするので、ワタルとしてはあまり来て欲しいものでは無い。
「帰ったらまた宿手伝わされるんだろうな」
憂鬱な気分に浸りながら封を切る。取り出してみると、いつもより文章量が多い。それほどの客がいたのだろうかと思うと、更に気分が沈んだ。
ベッドに体を預けて、横向きで文字を目で追っていく。その内容は、
「………………嘘だろ」
予想を遥かに超えた、緊急事態だった。
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