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23年前の白月になった頃だった。
日が真上に上がる頃、突然地響きが鳴って地が揺れた。
それはそれは、山が暴れた時よりもすごい揺れと音だった。
家の中では物が崩れ、棚は倒れ、仕舞いには壁にヒビが入る。
ワシは危険だと思って、婆さんを連れて外に出た。
…………あぁ、驚いたとも。
さっきまで、海を見れば水平線まで見えたんだ。
だが外に出てみたらどうだい?
水平線なんて見えやしない。
何せほら、お前さんらも見てきたろ?
浜から1メートル、そんな近くにアレが出来てたんだ。
驚いた驚いた。
右にも左にも終わりが見えなくてね。
何の魔術なんだろうなぁ。
ほら、23年も経ったのに、わかってることなんか、ほとんど無いだろう?
そうだなぁ、判ったことなんていったら、壁の厚さだけじゃないのか?
あぁ、後は術が効かないことくらいだねぇ。
壁の向こうがどうなってるか、ワシはもう20年分も知らんのさ。
ほんと、何のために出来たのか。
ワシが死ぬ前には、もう一度向こうに行きたいね。
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