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自宅の屋根に座り、遠くを眺める青年の姿があった。
栗色の短髪を無造作に跳ばし、前を見据える同色の瞳は、ここらの地域では異様なもので、彼の先祖が別の場所に産まれ出たことを示している。
その二重の双眼には、その場からうっすら見える氷の壁が写っていた。
彼がこの世に生まれる前に出来たものらしい。
あの壁のせいで、彼はその先祖が眠る地で育つことが出来なくなった。
彼にとって、故郷とは色の無い空想でしかない。
たまに母の口から漏れる故郷の風景が、人々が、勝手に頭の中に居着いただけなのだ。
見てみたい、行ってみたいと、思う。
だが壁は、政府の輩がどんな手を尽くしても、崩れる気配を感じさせない。
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