眩しすぎる光

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「リント様、目を開けて」 視界を覆っていた青年の手が外れると、白熱灯の眩さで思わず目を細める。 鮮明になった視界に先ず映ったのは、青年の優しい笑顔だった。 「………?」 「さぁ、リント様。此処から出ましょう」 青年に支えられながら立ち上がった時、目の前に信じられない光景が映る。 先程まで自分に暴行しようとしていた男達が、血を流したまま動かずに倒れていた。 呻く声も出ず、ただ物言わぬ屍が横たわっていた。 「なっ…!?」 「しつこそうだったので、息の根を止めておきました。これで、貴方を阻害する者はいない」 優しい顔付きなのに、その口から出る言葉は冷たかった。 自分に触れる手を、振り払いたかった。 でも、声も出せず、手足も動かず、ただその場に佇み、身体を震わせる。 「リント様?」 「…殺した…のか…?」 「ええ」 青年は否定する素振りもなく、笑顔で答える。 顔には返り血とみられる赤いものが付着しており、握っていた剣にも、刃を伝うように血が付いている。 本当に、本当に殺してしまったのだ。 今は屍となった男達を。 何度も顔を合わせてきた男達を。 「殺さなくても…、良かっただろ…!?」 リントは震える手で青年を突き放し、よろけながら距離を取る。 さっきまで生きていた者が、あっという間に命を絶たれた。 温厚な表情の青年の手によって。 「リント様…」 「来るな!!」 近付いた青年が手を差し伸べるも、リントは振り払う。 人の命を奪った、人殺しの剣士。 そんな青年の手など、取れる筈がない。 「貴方は、人を殺した事が無いのですか? 貴方を嬲ろうとしていた者すらも」 「人なんて…、殺した事が…」 すると青年は、無言のままリントに近付く。 リントは後退り、身構える。 だが青年は近付く事を止めず、遂にリントを壁際まで追い詰める。 「っ…!」 逃げ場を無くし、もう駄目かと思った。
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