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青年が手を伸ばしてくると、リントは思わず目を閉じる。
すると、優しい手付きで頬をそっと撫でられる。
「…!」
「やはり貴方はお優しい。あの頃と、何一つ変わっていない」
何度も彼を拒絶する言葉をぶつけたのに、何故彼はこんなにも自分を受け入れる?
疑問だけが、リントの頭の中を駆け巡る。
「触るな!!」
頬に触れる手を払おうとした時、青年に手首を掴まれ、動きを封じられる。
「…!」
「リント様。幾ら貴方が僕を拒もうと、僕は貴方を守ります。貴方は、僕が心に決めた方ですから」
「何、ワケの分からない事を…」
すると青年はリントから少し離れ、再び跪き、頭を深く下げる。
「申し遅れました。僕はフェイリル。隣国より、貴方を守りに来ました。」
フェイリルが顔を上げると、リントは動揺を隠せないのか、目を泳がせていた。
そんなリントの手を、フェイリルは優しく取り、そっと口付けする。
「っ…!」
「僕は貴方に忠誠を尽くします。この命に懸けて」
何が起きたのだろう。
変わらない日常を送っていた筈だったのに、何かが変わった。
何処で歯車が食い違った?
何処で道を違えた?
何処で運命が狂った?
今か。
それとも、フェイリルと言う剣士が現れてからか。
様々な混乱が頭の中を掻き回すように巡り、グラリと視界が歪む。
「リント様!?」
暗闇の中で、フェイリルの声が聞こえる。
何度も自分を呼ぶ声が次第に遠退き、遂には意識を手放した。
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