眩しすぎる光

12/12
295人が本棚に入れています
本棚に追加
/303ページ
青年が手を伸ばしてくると、リントは思わず目を閉じる。 すると、優しい手付きで頬をそっと撫でられる。 「…!」 「やはり貴方はお優しい。あの頃と、何一つ変わっていない」 何度も彼を拒絶する言葉をぶつけたのに、何故彼はこんなにも自分を受け入れる? 疑問だけが、リントの頭の中を駆け巡る。 「触るな!!」 頬に触れる手を払おうとした時、青年に手首を掴まれ、動きを封じられる。 「…!」 「リント様。幾ら貴方が僕を拒もうと、僕は貴方を守ります。貴方は、僕が心に決めた方ですから」 「何、ワケの分からない事を…」 すると青年はリントから少し離れ、再び跪き、頭を深く下げる。 「申し遅れました。僕はフェイリル。隣国より、貴方を守りに来ました。」 フェイリルが顔を上げると、リントは動揺を隠せないのか、目を泳がせていた。 そんなリントの手を、フェイリルは優しく取り、そっと口付けする。 「っ…!」 「僕は貴方に忠誠を尽くします。この命に懸けて」 何が起きたのだろう。 変わらない日常を送っていた筈だったのに、何かが変わった。 何処で歯車が食い違った? 何処で道を違えた? 何処で運命が狂った? 今か。 それとも、フェイリルと言う剣士が現れてからか。 様々な混乱が頭の中を掻き回すように巡り、グラリと視界が歪む。 「リント様!?」 暗闇の中で、フェイリルの声が聞こえる。 何度も自分を呼ぶ声が次第に遠退き、遂には意識を手放した。
/303ページ

最初のコメントを投稿しよう!