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「………」
目を覚ますと、見慣れた天井が映った。
寝返りを打って、枕元に置いてある時計を見ると、朝の8時を差していた。
「そんなに寝ちまったのか…」
覚醒しきっていない身体を起こし、ベッドから降りる。
ふと、何か違和感を感じる。
前方に目を向けるなり、リントは目を丸くした。
目の前の壁に凭れ、腕を組んで眠っているフェイリルが居たのだ。
すると、リントの覚醒に気付いたフェイリルが起床し、目を擦る。
「あ…。おはようございます、リント様。よく眠れ…」
「何故お前が此処に居る!?」
リントは毛布を盾に、ベッドに逃げ込んだ。
何をされるかと警戒の目を向け、身を縮ませる。
「リント様がお休みになられてる間に襲われてはいけないと思い、見張りをさせて頂きました。夜間帯は特に何も…」
「んなの要らねぇよ!! サッサと出てけ!!」
「申し訳ありませんが、それは聞き入れられません。貴方は僕が守らなければいけませんから」
「知らねぇよ!! 誰が、いつ守って欲しいだなんて頼んだ!? そもそも、俺とお前は会った事なんてねぇだろ!?」
リントの怒鳴り声は部屋に響き、耳が痛くなる程 大きかった。
なのにも関わらず、フェイリルは王に跪く騎士のように座ったまま、笑顔で耳を傾ける。
「おい!! 聞いてんのか!?」
「聞いていますとも。貴方が言われた事、一字一句間違えず」
「っ…、気持ち悪ぃ奴…! とにかく、俺はそんなの要らないからな!? 自分の身は自分で守る!」
「昨夜は、それすら儘ならなかったのに?」
フェイリルが少し低い声で囁く。
彼の表情が何処か冷たくなり、ゾクリとした寒気が背中を駆け抜けた。
「っ…!」
「貴方は自分で何でも出来ると言う虚勢を張っている。しかし、それは弱い自分を隠す為の嘘。素直になられては?」
「煩い!! いいから早く出て…!」
怒鳴っている最中、リントの腹の虫が空腹を報せる。
その音と共にリントの怒鳴り声は止まり、今度は恥ずかしそうに顔を赤くする。
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