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息を切らしながらも、何とかフェイリルを撒いたリントは、いつも立ち寄っているストリートチルドレン達の元に来ていた。
子供達から出された水を飲み、暫く此処で時間を潰す事にした。
「どうしたの、リント。今日は珍しく息なんて切らして」
「ああ…、ちょっとな…。しつこい奴が居て…」
「そうだったんだ。災難だったね。ゆっくり休んでって」
「悪ぃな…」
積み重ねられた鉄骨に凭れ掛かり、空を仰ぐと、綿飴のような真っ白な雲が流れていく。
“きっとこの空は、自分が記憶を失う前も変わる事なく青かったのだろう”。
いつも青空を見る度、そう思ってしまう。
そんな思いに耽っていた時だった。
「リント、大変だ!!」
子供の声で我に還り、慌てて起き上がる。
「どうした!?」
「い、今、街で人が殺されて…! リントがいつも通って来てる道で起きてるって!」
「…!」
血の気が引いた気がした。
まさか…。
「お前達は此処から出て来るな!!」
リントは子供達にそう言うと、集落から走って出て行った。
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