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「どうぞ、リント様」
自宅に戻り、フェイリルはリントをベッドに座らせ、顔や身体中に付着した血を拭き取る為に、濡らしたタオルを渡す。
フェイリルは床に座り込み、剣や装甲を外していく。
「お前は怪我とか無いのか?」
「僕は大丈夫です。ご心配頂き、ありがとうございます」
「いや、いいんだけど…。それより、さっきのアレ…。昔からああだったのか?」
「5年前に貴方と会うまでは、そんな事は無かったのですが…。何でしょう。運命的な何かを感じて、それ以来から貴方の側に居たいと…」
「運命的って…。あのなぁ、俺は男だぞ? 気持ち悪いとか思わないのか?」
「いいえ、全く。寧ろ抵抗する意味が分かりません」
サラリと答えるフェイリルに、リントは呆れて溜め息を吐く。
― とんでもない奴に好かれたな…。一体何をしたんだ、5年前の俺は…!
5年前の事など、記憶を失っているから到底分かる筈も無い。
運命的な何かを感じて、リントの元にやってきたフェイリルは、5年前の自分に会っている。
だが、何処か信憑性に欠ける。
しかも人を何人も切り殺しているのだ。
そんな危険人物の彼が、何故自分を守ろうとしているのか理解できない。
「あの…さ…。何でお前はそこまで俺に執着するワケ? 5年前、俺は何をしたワケ?」
「…僕を、助けて下さいました。身も心も、貴方の手で」
「助けた…? 俺がか?」
「はい。唯一の肉親の父が亡くなり、行く当ての無い僕の元に、貴方が現れたんです」
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