君との約束

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「おーい、フェイリルー!」 翌日。 宿をこっそり抜けて来たリントは、昨日フェイリルに連れて来られた路地裏にやって来た。 リントの声に反応したかのように、フェイリルが段ボールの山から顔を出す。 「お前、んなトコで寝泊まりしてんの?」 「でも、段ボールって意外と暖かいよ?」 「あっそ…。」 「じゃあ、行こうか。こっち。」 フェイリルは山積みになった木箱を伝い、高い壁を登る。 リントも続いて登り、フェイリルの手を掴んでよじ登る。 「高所恐怖症じゃない?」 「全然ヘッチャラ。」 そう言うと、フェイリルは壁から飛び降り、軽やかに着地する。 続いてリントも飛び降りる。 「なぁなぁ、退屈しのぎになる所ってどんな所だよ?」 「着いてからのお楽しみ」 薄暗い道を歩いていると、その先が明るくなっているのが見えた。 それが見えたのを合図にしたかのように、フェイリルが走り出す。 「あ、おい! いきなり走り出すなって! 待てよ!!」 次第に眩しくなっていく光。 フェイリルが立ち止まった途端、日の光と共に風が吹き付けた。 恐る恐る目を開くと、潮の香りが鼻を掠めた。 「うわっ…!」 目の前に広がるのは、太陽の光に煌めく青い海。 街中では聞こえなかった鴎(カモメ)の声が飛び交い、波が浜に打ち付ける音がする。 「此処、海…!?」 「この国は海沿いにあるからね。お気に入りの場所なんだ」 「スゲェ! 俺、海を見るの初めてなんだ! 本でしか見た事が無くってさ!」 「じゃあ尚更だね。こっちから降りれるよ」 フェイリルとリントは下へ降りる階段を下り、浜へと足を踏み入れる。 初めて砂を踏む感覚に、リントは目を丸くして何度も砂を踏み付ける。 「これが砂なのか…。思ったより柔らかいんだな」 フェイリルに目を向けると、何故か彼は不思議そうな顔をしていた。 「な、何だよ」 「ううん。君って、知らない事が多いんだなぁって」 「…まぁ、育ちが育ちだからな。外に出してもらえる機会が無かったから」 「そっか…。じゃあ、沢山遊んで、沢山楽しい事をして、いい思い出として持ち帰ってよ」 「おう! そのつもりだ!」
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