君との約束

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その頃、街では鎧を纏った兵士が何人も彷徨(ウロツ)いていた。 「何処に行ったんだ…!? また1人で抜け出すなんて!」 「些細な手掛かりでもいい! 何としてでも見つけ出すんだ!!」 何やら慌てている様子の兵士達。 あまり見ない光景に、街の人々は戸惑いを隠せずにいた。 「フェイリルー! これ何だー!?」 「それはウミムシ。気を付けないと、紫色の液体を吹くから」 「うぇっ、マジでか!?」 リントは直ぐにウミムシを離すと、他に何か居ないかを探す。 今までに無い経験に胸を踊らせ、無邪気に海岸を駆ける。 するとフェイリルがリントを呼び止め、こっちに来いと手招きをする。 「何だ?」 「ホラ、これ。耳に当ててみて。」 フェイリルが差し出したのは、手の平に乗る程の法螺貝で、リントは耳に当ててみる。 すると、貝の中から海の波音が聞こえた。 「風の加減で聞こえるんだ。良かったらお土産に」 「サンキュー、フェイリル! こんなに楽しいのは初めてだよ! 帰りたくなくなっちまったなぁ、俺」 「でも、家の人が心配しちゃうよ。またいつでも来てよ。僕、ずっと居るから」 「ああ! 約束な!」 リントは小指を立てて、フェイリルの前に差し出す。 フェイリルも頷き、リントの小指に自身の小指を絡ませる。 「また明日も来るよ。勿論、フェイリルも一緒だ」 「うん!」 互いに交わした約束。 しかし、明日それが果たせなくなるとは、当然2人は知る筈も無かった。
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