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灰色の雲に覆われた空。
フェイリルは、いつもの場所でリントを待っていた。
だが、時間になってもリントは現れず、そのうちにゴロゴロと雷が鳴り出した。
「こんな天気だから、来れないのかなぁ…」
空を仰いでいると、別のストリートチルドレンがはしゃいで道を走り抜けて行く。
会話に耳を傾けると、何処かの国の女王が来ていて、多数の従者を引き連れて歩いていると話していた。
「時間潰しに、少し見に行こうかな」
フェイリルは布切れで顔を覆い、大通りがある道へと向かった。
街の中央を通る道では、鎧を纏った兵士や、白馬に乗った騎士などが歩いていた。
その真ん中では大きな馬車が歩いており、シャープな顔付きの女性が乗っていた。
その隣には、顔を俯けたリントがいた。
「さぁ、リント。貴方は国に帰ったら、王のお叱りを受けるのです。私を手こずらせた罰です」
「………。」
「勝手に1人で何処かに行くなんて。この街にもストリートチルドレンが多く居ます。あんな薄汚い連中と絡んでた、なんて言いませんよね?」
「絡んじゃ悪ぃのかよ。」
「何て事…! 暫く貴方の外出を禁止します。二度とあのような愚民には関わらないように」
母の冷たい言葉に腹が立ったのか、リントは馬車の扉を開け、飛び降りた。
「リント!! 馬車を止めなさい!!」
リントは泥だらけになりながら、人込みを掻き分けながら走る。
馬に乗った騎士や鎧の兵士がリントを追い掛ける。
「何…!?」
前方が何やら騒がしく、フェイリルは背伸びをして様子を窺う。
「王子が逃げたぞ!!」
兵士達があちこちを探し回っており、街の人達は困惑している。
「王子って…! 何でそんな人が…!?」
その時だった。
「フェイリル!!」
人込みを掻き分け、リントがフェイリルの元に飛び込んで来た。
「リントくん!?」
「頼む!! 俺を匿ってくれ!!」
「ちょ、待って! 一体何が…!?」
「いいから、早く…!!」
フェイリルに縋るリントの手が小刻みに震える。
会って2日しか経っていないのに、リントはフェイリルをこんなにも頼っている。
リントが必死でお願いをしている事が、嘘じゃないと思えた。
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