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子供達の住み処を後にしたリントとフェイリル。
何故かリントは機嫌を損ねており、怒っている事を体現するように歩いていた。
「リント様。どうかされましたか?」
「あ゙ぁ!? どうかされましただぁ!? テメェのせいだよ、テメェの!!」
「僕ですか?」
「待ってろっつったのに!! なんで人の話を聞かねぇんだよ!?」
「もしリント様に何かがあったら、僕は気が気ではなくなってしまう気がして…。もしかしたらリント様が子供達に…!」
「妄想も大概にしろ」
コントのような会話をしていると、向かいから布切れを纏った人物が歩いてくる。
リントはその人物に気付かず、思わず肩をぶつけてしまう。
「っ…! 悪ぃ…!」
ぶつかった拍子に相手は転倒してしまう。
リントは手を差し出して、立ち上がるのを手助けする。
布切れを纏った人物は手を握り、立ち上がろうとした刹那、手を強張らせる。
「お…、お前は…!!」
「…?」
手を振り払い、地面に座り込んだまま後退りすると、何かに怯えるように身体を震わせる。
「お、おい。どうしたんだよ?」
「リント様、下がって」
フェイリルは鞘から剣を抜き、刃先を向けて警戒する。
「おま…、お前は死んだ筈だ…!! お前は死んだ筈なんだ、リント!!」
名前を呼ばれた時、リントは剣を向けるフェイリルの手を掴んだ。
「リント様…?」
「剣を下ろしてくれ、フェイリル。コイツ、俺の何かを知ってるのかもしれない」
リントに従ったフェイリルは剣を鞘に納め、一歩下がる。
リントは怯える人物に近寄り、肩に手を置く。
「生憎、俺は数年前から記憶が無いから、お前が何者かは知らない。何か知ってるなら、教えてほしい」
すると人物は落ち着きを取り戻し、頭を覆っていた布切れを外す。
中年ぐらいの男性で、かなり憔悴している様子だった。
「わ…、私はこのハルフヴェルグ国の亡き王の弟だ…。」
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