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煤けた煉瓦で建てられた建物が並ぶ商店街。
この辺りは何かしらの店が多く、中には闇市にありそうな物を売る業者もいる。
人の姿は疎(マバ)らで、少し肩がぶつかっただけで掴みかかってくる者もいた。
道端には飢えで倒れる者や、膝を抱えて道端で人の流れを見つめるストリートチルドレンの姿もある。
これがこの国の現実。
雨も降らない渇ききった大地。
一言で言えば、“酷い”としか言えない。
そんな虚無に包まれた街を、1人の少年が駆けていく。
走る度に項(ウナジ)辺りまで伸びた茶髪が揺れ、膝下までの長さの黒い編み上げブーツが砂を巻き上げる。
「待て!! このガキ!!」
少年の背後には、数人の屈強そうな男達が追い掛けてくる。
手にはナイフなどの刃物が握られており、本気で少年を手に掛けようとしている事が窺える。
対する少年の手には袋が握られており、中にはお菓子が入っていた。
角を曲がり、路地に入ると、先程の道より狭い通路になる。
時折、段ボールや樽が妨げになり、少年は何とか避けながら駆け抜ける。
「クソッ、あのガキ…! すばしっこい奴だ!!」
「何人か回って、袋のネズミに…!!」
その時、正面から段ボールが飛んできて、先頭にいた男の顔面に命中した。
「んがっ…!!」
「お、お頭、大丈…ぐわっ!!」
次々と段ボールが飛んできて、終いには山積みにされていた樽が雪崩のように転がってくる。
「うわっ、に、逃げろ!!」
男達は一目散に逃げ出し、少年を追い掛ける事を諦めた。
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