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隠された素顔
気が付くと、いつの間にか街の外れで倒れていた。
怪我は無いが、全身が泥だらけで、みすぼらしい格好をしていた。
何故、自分が今こんな事になっているのか、理解出来なかった。
身体を動かせば、頭がズキリと痛む。
周りを見ると、何処かの草原らしいが、草木は枯れ果て、吹き付ける風は焦げた匂いが混じっていた。
漸く顔を上げると、目の前の街が赤い炎に包まれ、焼かれていた。
時折、爆発も起き、その度に悲鳴のような声が聞こえる。
これは現実か。
それとも悪夢か。
どちらにしても、とにかくこの場から逃げ出したかった。
でも、身体が思うように動かせない。
助けを求めても、周りには誰もいない。
孤独と絶望に苛まれたリントの頬に、一筋の涙が伝った。
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