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昼近くまで休養したリントは、猫のように伸びをし、執務を再開した。
フェイリルやレイが持ってくる報告書などを次々と処理していると、ある程度の荷物を整えたアルシアが執務室にやってきた。
「突然申し訳ありません、王子。少し急用が出来てしまって、ここで暫しのお別れになります」
「急用? なんかあったのか?」
「実は、お母様が風邪を拗らせてしまったらしくて…。お父様は外交に出掛けてしまっていて、家臣が留守を預かってる状態で…」
「そりゃ大変だな…。それなら早く帰ってお袋さんの側にいてやった方がいい」
「ええ。せっかくですが…。でも、今回は王子のお顔を見れて嬉しかったです。今後とも宜しくお願いしますね」
するとアルシアはリントに近寄り、耳打ちをする。
「もし子供が必要になったら、その時はお任せ下さいね?」
とんでもない事を平気で口にすると、リントは思わず赤面し、言葉を失う。
「なっ、あ…! ちょ、おまっ…!」
「では、失礼します。またお会いしましょうね」
アルシアが会釈して執務室から出ていくと、フェイリルが入れ違いで入ってきた。
リントの呆然とする姿を見ると、フェイリルはリントの頬を軽く引っ張る。
「リント? どうしたの?」
「いっ、や、な、何でもない!」
「顔赤いよ? 王女と何かあった?」
「何でもないから! その…、今日改めて、女って怖ぇなって思って…」
「? どうして?」
「と、とにかく! さっさと溜まった仕事、終わらせるぞ! こうなったらヤケクソだ!!」
リントはアルシアの爆弾発言を振り切るかのように、執務に励むのだった。
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